SCENE106
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10大前 晋 氏Omae SusumuKassai Toshiaki姫路市では、1980年代から進めてきた姫路駅周辺の大規模整備計画により、これまで駅前広場や都市型ホテル、商業ビル、シネマコンプレックス、専門学校など、にぎわいをもたらす多彩な施設が整備されてきました。「アクリエひめじ」も計画の一環として完成したもので、姫路駅からつながる屋根付きの連絡通路が、公園「キャスティ21」を経て2階のメインエントランスに直結するよう一体的に整備されました。「アクリエ」には、「未来へ続く、新しい創造の架け橋となる場所に」という願いが込められていますが、まさに願いを具現するにふさわしい施設といえます。その最大の特徴は、規模の異なる大・中・小のホールと、フレキシブルに使用できる大規模な屋内展示スペース、大小さまざまな会議に活用できる会議室など、多機能性に富んでいることです。これによりイベントやコンサートなど単体の催しはもちろん、各施設の複合利用により学会や国際会議などコンベンションの受け入れも可能となります。一方、外観は世界遺産・姫路城を意識。連立式天守をイメージした白壁の高層部、石垣をモチーフにした色調のレンガを±8mmの凹凸をつけて全て手積みとし、陰影のある表情を創出した低層部で構成されています。ホワイエの床も姫路城内を意識し、自然木特有の木目や節を生かした明るいフローリングで、3層吹き抜けの自然光を取り込んだ開放感のある空間と調和しています。そして外壁同様、内装にもそれぞれ色調の異なるレンガを施したのが大・中・小の3つのホールです。大・中ホールの緞帳は、姫路市出身の世界的デザイナー故髙田賢三氏がふるさとへの感謝の気持ちを込め、朝日と夕日をそれぞれデザインされており、荘厳な空気を放っています。播磨圏域初となる2,010席の大ホールは3層客席形式とし、上階は前方に突き出る構造にすることでステージまでの距離を感じさせない空間となっています。音響反射板を備えることで、アコースティックでの演奏時に豊かな音の広がりと残響を姫路市 観光スポーツ局文化コンベンション推進室 室長確保し、大規模で本格的なコンサートの開催が可能となりました。その他、プロの公演から市民イベントまで幅広く使える中ホール(693席)、気軽に使いやすい小ホール(164席)も、コンピューターシミュレーションで最適な音響性能を模索しながら設計されています。また、座席についても座り心地にこだわり、余裕のある幅530mmを確保し、クッションの硬さも検証を繰り返すことで、長時間の観覧にも疲れを感じさせない座席を採用。背板と床との隙間をなくすことで前席にモノが落ちる心配もありません。いずれのホールにも車椅子席と多目的鑑賞室を配置し、ユニバーサルデザインにも配慮しており、誰もが文化芸術に親しめる環境を整えることができました。開館前後の約3年(令和3〜5年度)を「オープニングシリーズ」と位置づけ、「賑わい・交流促進事業」「市民文化醸成事業」「コンベンション誘致事業」を通して多彩な催しを展開してまいります。「アクリエひめじ」の誕生が地域に活力とにぎわいを創出し、姫路市の魅力向上とともに交流人口の拡大に寄与できることを願っております。姫路市 観光スポーツ局手柄山中央公園整備室 主幹 アクリエひめじ(姫路市文化コンベンションセンター)所在地:兵庫県施主:姫路市設計:株式会社日建設計■西 俊明 氏まちの魅力向上と、都市の活力を生み出す多機能施設

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