09SPACE QUEST 02KYOTO RACECOURSEJRA日本中央競馬会京都競馬場 建築設備課 課長山畑 成 氏Yamahata Shigeru京都競馬場所在地:京都府施主:JRA日本中央競馬会設計:株式会社 安井建築設計事務所1925年にこの地に開場以来、当競馬場は西日本最大の規模を誇る競馬場として長い歴史を刻んできました。今回の大規模改修は、2025年に100周年を迎える記念事業の一環として計画されたもので、2020年から休止期間に入り、スタンド、パドック、馬場など施設全体のリニューアルに取り組んできました。改修計画に伴い掲げたコンセプトは、「夢と感動を届ける日本を代表する娯楽・レクリエーション施設」「アクセシビリティへの配慮」「環境への配慮」「時代の変化への対応」の4点です。とりわけ最初に掲げたコンセプトの「夢と感動を届ける」というフレーズは、JRA日本中央競馬会の経営基本方針でもあり、レースの迫力、馬の美しさ、推理の楽しみが一体となった競馬の魅力を、いかに幅広いお客さまにお届けするかというのが、施設計画の大きなテーマでした。そこで何より重要となるのが、競馬ファンの皆さまがいかに快適な環境で競馬を楽しんでいただけるかということです。整備計画では京都競馬場の名物として知られた円形パドックを、思い切って楕円形のパドックにリニューアルすることにしました。さらに、2階にパドックを取り囲む「パドックリング」を設置し、多くのお客さまが出走馬を間近で見られる環境を整えています。計画時には、開設以来親しまれてきた円形パドックを変更することへの不安がありましたが、結果的にお客さまから見やすくなったと高い評価をいただくことができました。また、指定席のお客さまと馬主さまのフロアを別にし、馬主さまの階にはラウンジを設けてレースの合間にくつろぐことができ、観戦は新たに設けた開放的なバルコニーでできるようにしました。屋内指定席についても、補強のためのガラスリブがない設計にし、ガラス越しに見るレースがより見やすくなっています。加えて座席も全面改修により、快適性が大きく向上しました。一方で、新たな競馬ファンの取り込みにつなげるため、女性やファミリー層を意識した工夫も施されています。例えば女性専用のエリア「UMAJO SPOT」を設け、パウダールームや女性だけでくつろげるリラックススペースを設置。お茶やスイーツを食べながら、競馬についてのおしゃべりを楽しむことができるようになりました。また、京都競馬場のシンボルだった円形パドックの跡地を憩いの場とするとともに、お子さま連れのファミリーがお弁当を広げたり、遊具で遊べる、陽だまり広場と緑の広場もございます。近年は一定の割合で女性のお客さまやお子さま連れのファミリー層が競馬場にお越しになっており、男性の趣味という競馬のイメージが変化してきたことを実感しています。今回のリニューアルをきっかけに、今まで一度も競馬に接したことのなかった皆さまの興味を喚起し、生まれ変わった京都競馬場の快適な空間で過ごしていただくことで、さらに幅広い皆さまに競馬の「夢と感動」に出会ってもらえることを願っています。多彩な工夫でコンセプトを具現した競馬場
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