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05SPACE QUEST 01INTERNATIONAL CHRISTIAN UNIVERSITY TROYER MEMORIAL ARTS AND SCIENCES HALL株式会社 日本設計建築設計群 上席主管鈴木 悠生 氏Suzuki Yusei新校舎には自然科学系の研究室・実験室が移転されることから、弊社に蓄積された実験棟設計の知見を生かし、新校舎のコンセプトに合った研究・実験空間を構築するのが課題の一つと考えました。通常、研究室・実験室は利便性を重視して隣接するのが一般的ですが、「文理融合」という新校舎の役割を考えたとき、研究室・実験室のあり方を再構築する必要性を感じました。そこで議論を重ね計画したのが、研究室ゾーンと実験室ゾーンを分離し、その間に文系の学生が出入りする講義室や休憩、自習、打ち合わせに利用できる学生共通スペース(ハブ・セントラル)を設けるというゾーニングです。これにより研究・実験に携わる先生・学生は研究室と実験室を行き来することになり、教室を利用する学生の動線と交わります。学生共通スペース(ハブ・セントラル)にはソファやイス、テーブルを設置し、研究の打ち合わせをする先生と学生、授業の準備をする文系の学生が集うことになります。実験室はガラス張りにして、行き来する学生の興味を刺激するようにしました。また、実験室の内装については、配線などが自在にカスタマイズでき、機器の設置などの更新に対応できる鉄骨フレームを格子に組んだ「グリッド天井」を提案し、フレキシブルな実験室を実現しました。さらに、設備シャフト系のダクトや配管を建物の外壁に露出することで学生共通スペース(ハブ・セントラル)を生み出し、メンテナンス性を高めています。クアドラングルに面した木の温もりのあるファサードに対して、インダストリアルな外観がデザイン的な味わいにもなっています。一方、この学生共通スペース(ハブ・セントラル)では、自然換気と機械空調を併用したハイブリッド空調を採用。冷房と暖房に加え、「夜間冷房」「自然換気+冷房」の2つのモードを加えた「4つのモード」を採用することで、夏場は自然換気により冷房運用を低減し、省エネにも貢献し快適な環境になるように計画しております。今回、研究室・実験室フロアの設計について従来の常識に則さない提案により、先生や学生の皆さんに受け入れられるか気がかりでしたが、供用後学生共通スペース(ハブ・セントラル)に人が溢れる光景を目の当たりにし、コンセプト通りの交流[上]2階 学生共通スペース/イス [中]3階 学生共通スペース/イス:プロほか、テーブル・対面テーブル:特注品 [下]3階 学生共通スペース/テーブル、ソファ、スツール空間として機能していることを実感しました。このハブ・セントラルやクアドラングルを含め、文理融合を促す対話・交流の場になることを願っています。オープンでフレキシブルな研究・実験ゾーンで、対話・交流を促進

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