SCENE112
7/32

トロイヤー記念アーツ・サイエンス館ガレリア06[左]隈研吾建築都市設計事務所設計室長成澤 佳佑 氏Narisawa Keisuke[右]隈研吾建築都市設計事務所主任技師小林 章太 氏Kobayashi Shota文系・理系の先生・学生が交流し、シナジーが生まれる共有空間をいかに創出するか。それが新校舎設計の課題でした。これを踏まえた提案の一つが「クアドラングル(広場)」の再構成です。新校舎の建設で生まれる裏庭のようなミニクアドラングルを整備することで、本館で南北に分断されていたクアドラングルとつながり、緑豊かなキャンパスに開かれます。さらに、ミニクアドラングルに沿って出幅約7mの巨大な木の庇をかけた「ガレリア」と呼ばれる空間を設けました。庇に組み込んだトップライトから柔らかい光が差し込み、木の温もりと緑に包まれたガレリアとミニクアドラングルが学生の交流の場となります。一方、建物1階にはさまざまな用途で使用できる「ハブ・セントラル」という共有空間を設けました。ガレリアと並行し約60m続く線状のハブ・セントラルには、ガレリアに面してイス、テーブルが設置され、学習に集中できるスペースになっています。セミナールームやカフェも隣接しているので、グループ学習や研修の合間に休憩したり、仲間と飲食しながら交流を深めることもできます。また、吹き抜けでつながる1階の階段周辺にもイスやテーブルを設置し、こちらは垂直につながるハブ・セントラルを構成。動線が絡み合う空間に多様な活動を垣間見ることができるよう、実験室や講義室は可能な限りガラスのパーティションにしました。吹き抜け空間の内装は木ルーバーと木パネルで構成し、自然換気システムの風の道とハイサイドライトからの木漏れ日のような自然光が、光と風を感じる交流空間を創出します。フロアのサインは学内の伐採樹木を再利用して造作し、ハブ・セントラルに設置した家具も木の内装と調和するものを選定しました。家具の種類やカラーは1つの空間で多様性を持たせ、多様な知の交流を意識しました。完成後のガレリアやハブ・セントラルは、学生さんにも好評で常時にぎわっているようですが、建物は使う人によってアップデートしていくものです。今後、ICUの先生や学生の皆さんが、新校舎でどんな気づきや交流を生み出し、新しい価値の創造につなげていくのか、そのプロセスを楽しみに見守っていきたいと思います。国際基督教大学トロイヤー記念アーツ・サイエンス館所在地:東京都施主:学校法人国際基督教大学設計:日本設計・隈研吾建築都市設計事務所設計共同企業体トロイヤー記念アーツ・サイエンス館周辺施設 位置関係図駐輪場理学館クアドラングルミニクアドラングルクアドラングル本館駐輪場「文理融合」の象徴となる、特徴的な交流空間を創出

元のページ  ../index.html#7

このブックを見る